実践報告
DO-ITスクールプログラムは、インクルーシブな学校・学習環境を整備することを目的としたプログラムです。選抜されたプログラム参加校の先生とDO−IT Japan、共済企業が協力して、環境整備や指導実践の事例を創出しています。DO-IT Japanと共催企業は、学習に関するテクノロジーやサービス、支援に関するノウハウを参加校に無償提供します。
GIGAスクールの取り組みが全国の学校で展開され、教育現場に、児童生徒が使うことができるICT機器が当たり前に存在するようになりました。「機器がないからICT利用が認められない」という状況は大きく変わりました。その一方で、障害のある児童生徒が、日々の学習や試験で、個々のニーズにあったICT活用ができる教育環境の整備は、解決すべき課題となっています。
今回、DO-IT Japan共催企業「日本マイクロソフト株式会社」と合同で、DO-IT Japanスクールプログラムを実施しました。対象は、限局性学習症(もしくはその疑い)により、読むことや書くことに困難がある小中学生と、その児童生徒を指導している教員としました。
プログラムには、通級指導教室の担当教員(公立小学校3校、公立中学校1校の計4名)が選抜されました。 先生の工夫あふれる実践内容を掲載しております。ぜひご覧ください。
プログラムに参加した教員・児童生徒
(学校名は、DO-ITスクールプログラム参加時のもの)
プログラム実施におけるサポート体制
日本マイクロソフト株式会社は、機器の貸与とその利用に対するサポートを行いました。
- LTE対応のWindowsタブレット、ソフトウェア等の機器の貸与
- 指導・学習に必要なアプリや周辺機器の設定
- 機器利用やネットワーク設定に関するテクニカルサポート
DO-IT Japanは、指導に対する助言・情報提供を行いました。
- 読み書きの困難さを把握するアセスメントの実施と所見の共有
- 学校訪問やメール、オンライン会議を通じた指導方法に関する助言
プログラムのスケジュール
参加校の先生は、日本マイクロソフト株式会社、DO-IT Japanからのバックアップを受け、ICT を活用した読み書きに困難がある児童生徒の指導を行いました。
2020年12月5日(土)
成果活動報告会の開催
「DO-ITスクールプログラムにおける読み書き困難な子の教育実践」
成果活動報告会は、コロナウィルス [COVID-19] の感染拡大リスク防止のため、オンラインにて開催しました。成果活動報告会には、約300名ほどの方にご参加いただきました。児童生徒学生(本人)やその保護者、特別支援に携わる教員・支援者、医療関係者、教育委員会等、多数の方にご参加いただき、ディスカッションが行われました。
[参加者からのアンケート(一部抜粋)]
- ICT活用によって、なんとなく可能性が広がりそうというイメージでしかなかったので、実際の状況を聞くことができて参考になりました。特に周りがただ環境を与える、整備するだけではなく、子ども本人が納得して取り組むことの重要さを感じました。
- 通常の指導ではなく配慮のある環境であれば生徒の変化もあり、生き生きとした学校生活が送れていると感じた。
- 子ども以上に大人の側が貪欲に新しい支援技術方法にトライしていく姿勢が大切だと思いました。
- わからなくてつまらなかった授業がわかるようになってきたことで、意欲がでて自分で書いてみる!という気持ちになれたこと、これが本当のICTで補う意義であり、困り事のある子どもへの最高の配慮だと思いました。
プログラムの成果活動報告
成果活動報告会(12月開催)に使用した発表スライドと、指導実践を詳細にまとめた成果活動報告書を掲載しています。多様なニーズのある児童生徒と先生との活動を、ぜひご覧ください。
成果活動報告会の発表スライドは、掲載可能箇所のみ抜粋して掲載おります。成果活動報告書と併せてご覧ください。
感覚過敏のある読み書きに困難がある
小学生(児童)への指導・支援
赤池 睦子 (板橋区立蓮根第二小学校)
アーレンシンドローム(光感受性の高さから生じる視知覚の困難)のある児童を対象とした指導実践です。
赤池先生は、読み書きのアセスメントに加え、視知覚のアセスメント、見え方のヒアリングを行い、児童がより学びやすいような機器設定や教室の環境調整を実施されています。通常学級やテスト等にも ICTの利用が可能なるように、学内の環境整備も取り組まれています。
- アセスメント結果による児童の支援ニーズの把握
- アクセシビリティ機能の活用
- ICT利用を含む児童の学習に対する校内の支援体制整備
読み書きが苦手な
小学生(児童・2名)への指導・支援
田渕 恵美子 (守谷市立守谷小学校)
読み書き困難がある小学生・中学年の児童(2名)を対象とした指導実践です。
田渕先生は、各児童の読み書きのアセスメント結果や、興味関心に軸に置き、ICTを活用した読み書きを代替する指導を実践されています。また、ICT利用や通常学級へのICTの持ち込みについて、児童の意見を尊重したやりとりの過程がまとめられています。
- 児童の興味関心を利用した教材開発
- 児童のICT利用の習得度にあわせた指導の実施
- 児童の希望を尊重した学習参加方法の検討
漢字の読み書き、考えをまとめる事が苦手な
小学生(児童)への指導・実践
保田 美紗子 (川崎市立久本小学校 ※現在、在籍校異動)
漢字の読み書きや、考えをまとめることに困難がある児童を対象とした指導実践です。
保田先生は、児童の学習参加に対する動機づけを高める環境調整を実践されています。ICTを活用した代替機能アプローチと、練習学習する教育的アプローチの両方の指導を児童と体験し、児童の学ぶ力の拡充を図る実践も取り組まれています。
- 長期目標から考えた今年度の指導目標・指導方法の検討
- 児童の「やりたい」から始める特別支援教育
- 教育的アプローチと代替的アプローチを組み合わせた指導の実施
読み書きが苦手な
中学生(生徒)への指導・支援
田中 雄三 (川崎市立生田中学校 ※現在、在籍校異動)
視覚的注意と眼球運動に困難さがみられる生徒を対象とした指導実践です。
田中先生は、生徒が取り組みやすい教材の作成や、ICTを活用した学習方法の例を示し、生徒が自分にあった学習方法を探す過程を支援する実践をされています。生徒へICT利用の考えについて傾聴すること、自己権利擁護等の情報提供の時間を持ち、生徒の自己理解の促進や支援体制の決定についての取り組みが、まとめられています。
- 生徒の支援ニーズにあわせた学習支援の体制整備
- 授業やテストでのICT機器利用に向けた環境調整
- 生徒が多様な学び方や自身の自己権利擁護を知るための情報提供